Side Story of Item:賢者の杖の伝承(1)
[ガスト島内部 冒険者の拠点] 拠点では冒険者たちがせわしなく、島の攻略の準備を進めている。その中でひとりの黒魔導士だけが、疑念を抱いた表情で机に向かっていた。 「うーん、やっぱりわかんない」 机の上に置かれた一本の杖を、黒魔導士はまじまじと眺める。その杖の名は《古の杖》。黒魔導士が島の攻略をしている最中、道端の宝箱から拾った杖だった。試しに使用したら思った以上に高性能だったため、今の黒魔導士はこの杖を主に使用している。 「こんな文字、他のところで見たこともないし・・・」 しかし同時に、この杖の謎に黒魔導士は頭を悩まされていた。村人製とは思えない奇妙な装飾。彼女の知識にあるどの文字体系とも結びつかない、柄に刻まれた謎の文字。欠損が多いにも関わらず、正常に魔術を行使できてしまう異常。 そんなこと気にせず使えばいい、とは本人も思っているのだが、彼女の生来の探求精神、研究家気質がそれを許そうとしない。だからこうして攻略にも行かず、一人でずっと悩んでいた。 …