氷鉄戦争_:国境紛争
息抜きの為の番外編
氷と鉄で出来た平所属の氷鉄蟻が造った塹壕を走る谷所属の氷鉄蟻達、彼らは氷を砕き鉄を焼くビームが飛び交う前線の端っこから遠回りするようにして奇襲をかけた。
塹壕を腕で堀り唾液で固めていた平鉄蟻達は反応が遅れ、一斉に谷鉄蟻の氷塊をも砕く剛腕と爪の一撃で体を砕かれた。
「タイチョー!敵コロシマシタ!」
「ヨクヤッタ!クウテイ部隊ガ来ルノヲ待テ!」
谷鉄蟻は平鉄蟻の造る塹壕を通り平鉄蟻の前線基地へと赴く。
平鉄蟻の前線基地は氷をベースに金属で補強したような雑な作りの物に見えるが、氷鉄蟻の分泌する唾液に含まれるスライムのような粘液がやがて凍り付き壁等の素材と一体化する事によって凄まじい強度を産む。
それは氷鉄蟻達が撃ち出すビームにもびくともせず、谷鉄蟻が攻めあぐねていた平鉄蟻の重要な拠点である。ここを谷鉄蟻が制圧すれば蟻塚という国家同士の国境紛争に対しての勝利を意味するが、逆に平鉄蟻は蟻塚より増援が到着するまで持ちこたえなければ勝利は遠のくだろう。
平鉄蟻の建設した前線基地は豆腐のを二段重ねにしたような二階建ての四角い建築物である、建物の横に氷と金属のスクラップが柵のように広がっておりその後ろに塹壕がある、横に長く掘られた塹壕は前線基地の地下と繋がっており、多くの平鉄蟻達がビームを撃ちだし谷鉄蟻の接近を邪魔している。
谷鉄蟻の目的は空挺部隊が気を引いてるうちに突入を試みるものである。
また、空挺部隊だけでなく谷鉄蟻側の塹壕でもたついている谷鉄蟻にも動き出すように見せる事で奇襲部隊の作戦を成功させる所存なのだ。
氷鉄蟻は基本的にあまり賢くない生物である、この前面、空からの襲撃、そして横からの奇襲を一斉に行うという作戦も谷の司令官蟻達が必死に頭を動かしたから思いついた画期的な作戦なのだ、勝利の為にも当然失敗は許されなかった。
氷鉄蟻は職蟻ですら翅を持ち飛ぶ事が可能な生物であり、元来、高所からの奇襲で敵を仕留める事を常陽手段とした。しかし予め相手が来るとわかっていればそれに対処出来るビーム攻撃を全ての氷鉄蟻が行える為、こういった氷鉄蟻同市の縄張り争い、もとい国境紛争では正面衝突が一番発生する状況の為に持ち前の翅は使われてこられなかった。
障害物に身を隠さず正面から翅で飛んでいく等、格好の的でしかないからだ。
しかし谷の司令官蟻達は建設仕事を任されている氷鉄蟻達と相談して此度の空挺部隊を空高く撃ち上げる事によって接近に気づかれにくくする作戦を立てていた、そして造られた画期的な兵器とは、[カタパルト]。
カタパルトによって空挺部隊を空高く撃ち出し翅による滑空で適地上空に移動するというこれまでの(氷鉄蟻同市での)戦争の歴史を塗り替えるような作戦が決行されたのだ。
カタパルトで次々と撃ち出される空挺部隊の谷鉄蟻達、翅を広げ適地上空へと移動し、そのままの勢いで落下。敵に直接ぶつかる様にして衝撃を和らげる。空挺部隊の攻撃が成功を確認した谷の塹壕にいた谷部隊長蟻達は各々の谷部隊員蟻に指示を出し10分の4割が突撃、残りの6割は制圧射撃の援護を行った。これらの谷鉄蟻の行動に注意を奪われ必死に対処する平鉄蟻達を横から挟み込むように攻撃した者達が居た、奇襲部隊である。
三方向からの攻撃により平の前線基地はやがて谷の氷鉄蟻達によって制圧された。逃げた者は降りずに上空を滑空していた谷分隊長蟻達の攻撃を受け死亡した。
カタパルトで氷塊や鉄塊を撃ち出せば敵の前線基地を破壊出来る事に司令官蟻達が気が付いたのは平の前線基地が制圧されてからだった。