旧き冒険者の足跡/地の底の世界で
(―ここは何処だろう?
確か、大穴を見つけて、試しに進んでみたら、うっかり滑り落ちて、死を覚悟して・・・)
(ああ、私は地下に落ちたんだ。)
一筋の光も差さない地の底。
たった一人の人間が迷い込んだ。
剣は折れ、
防具も砕け、
腹を満たす物もない。
(・・・でも、この状況こそ私が待っていたもの)
―彼は笑みを浮かべる。
それこそ、彼が冒険者と呼ばれる所以だった。
どうやら私は、キノコの上に寝転がっている状態のようだ。
上を向いても天井しか見えない。まずは起き上がろう。
(よいしょ・・・っ、痛!)
地上からここまで落下した反動か、身体の節々が痛む。
(そもそも、地上から落ちてきた私は、何故生きているんだ?)
普通なら、いや普通じゃなくても確実に死ぬ高さの筈。
・・・そんな事を考える前に、まずは生き延びなければならない。
周りを見渡し、現状を把握する。
(キノコ、キノコ、あっちもキノコ・・・で、足場に木材が使われてる)
周りを見渡してみると、キノコの生えた浮島に加え、炭鉱のような木材の足場が連綿と続いていた。
(とりあえず、キノコを食べてれば飢えは凌げるかな?)
飢えの心配が無くなくなったものの、一安心する余裕はなかった。
橋二つ分向こう側ではあるが、幽霊のような怪物が群がっていたのだ。
(うげ、怪物?)
(うーん、不味いなこれ。下手したら死ぬ)
恐らくではあるが、きっとあの怪物はこの地下全体に生息しているのだろう。
幽霊というものは、一体でもいたら百体いるものなのだ。
(早急に、武装も揃えないとね)
幸い、木材の足場を使って簡単な剣は作れそうだ。
防具が心もとないが、彼らから奪えば問題ないだろう。
「よし、剣ができた」
近くの柵を引きちぎり、少々強引ながらも剣を組み立てた。
低級の魔物なら、この程度でも何とかなるだろう。
(・・・さて、どうしようか?)
食料はそこら中にある。装備も何とかなる。
ならば、どう進めばいいのだろう?
そもそも、この世界に脱出口はあるのか。
場合によっては、この世界に永住しなければならない。
(・・・いや、脱出口はある。
いつだってそう信じてきた。
今はまだ、闇雲に探すことしかできないけど)
進むべき道を探し、周りを、遠くを見渡す。
(橋、キノコ、橋、怪物、キノコ、山、橋、キノコ、怪物、橋)
「・・・山?」
遠くの方に、山のようなものが見えた。
きっと行くべきはあそこだろう。
冒険者の勘が、そうささやいていた。
4 Comments
匿名
この大穴・・・深いっ!
匿名
ダウンロードしたいです。
匿名
欲しい
Anonymous
欲しい